久しく本棚に眠っていたバルザックの「幻滅」を読んだ。
恐ろしく長い小説で、読むのに1か月を要しましたが、
実に面白かった。
またしても、古典の持つ底力を感じずにはいられない。
なんといっても人物が独特。
分かりやすいが、複雑。
ほとんど8割方が悪人で、主人公・リュシアンやダヴィッドに襲いかかり、
破滅に追い込む。
野心家で傲慢なリュシアンは計略に自ら填り、
驕り、欲望の世界に身を投じることになる。
しかし、善良なるダヴィッドは破滅を受け入れ、
自らが幸福になる手立てを探っていく。
特出すべきは、計略を高じた悪漢たちが、
ほとんど世間で言うところの成功を収めているというところだ。
考えてみれば、これが現実なのだろう。
夢も希望もないが、善良なる者が人の上に立つとは限らない。
バルザックは超現実主義として知られる。
ただ、その現実の中にダヴィッドという希望を組み込むことを忘れていない。
現実の中に、埋もれるように咲く一輪の花のような希望。
そういうものが、この作品を救っている。