私の通っていた大学は、駅からかなり離れていた。
歩いて、20分あるのに、バスも走っていない。
不摂生な生活をしていた大学生にとって、
その道のりはだるい。
そんな時、時々、友だちが『パチンコに勝ったから、タクシーで行こうぜ』
と、颯爽と駅待ちのタクシーに乗り込んだ。
私は、その友だちが崇めるようにして、便乗した。
パチンコってスゲェな。
学生がタクシー乗れちゃうんだもん。
なんて、考えたものだ。
それでも、私はパチンコをすることはなかった。
一番に私には、博才がなかったからだ。
そして、何となくだがタクシーに乗るなんて贅沢だな、
という感覚も大切なように思えたから。
それを失いたくなかった。
カジノ法案が成立した。
日本人は、何を得て、何を失うのだろう。