NHKドラマ「破裂」を視聴。
私の師匠猪俣憲吾がよくこんなことを言っていた。
『大きな嘘はついていいが、小さな嘘はついてはいけない』
破裂はまさに、大きな嘘をついた。
治験で老人達を減らしていくという荒唐無稽な大嘘。
しかし、医師である原作者は、確信犯的にこの大嘘を作り出したのだろう。
その証拠に、この世界観の中ではきちんとしたルールがあり、
小さな嘘を極力少なくしている。
もちろん、一つもないというわけではないが。
そして、大切なのは、この大嘘で作者は真実を語ろうとしたのだ。
このままいったら、この国が破裂するという真実。
この真実を前にこの国の政治家をはじめ国民は、あまりにも無力だという真実。
最後は生きたいと執念を燃やす人間の性と、
「死なせて」と懇願する老人の諦念。
この矛盾する二つの思いが、同居している老人問題の難しさ。
人は生きる権利があると共に死ぬ権利もあるか。
命は誰のものか。
この答えのないを突きつけるための大嘘ならば、
いくらでもついて構わないと個人的には思う。
願わくば、この嘘をしっかりと受け止め、重箱の隅に迷い込まない文化はほしい。
芸術やスポーツもそうだが、その国の文化を育てるのは、
目の肥えた大衆の眼力だと思う。