林芙美子の「浮き雲」という小説を読んだ。
簡単に言ってしまうと、『バカ男に翻弄される、哀れな女の話』なのだが、
林芙美子の手にかかると、どこか美しいものになるから不思議である。
しかも、その美しさは温室で大事に育てられた胡蝶蘭の美しさではなく、
野に咲くレンゲソウのような美しさなのだ。
でも、冷静に考えると、身勝手な連中の身勝手な話、なのだ。
大切なことは「何だこいつら」と思われないように、
どうしようもない連中を書く、ということなのかな、と感じた。
そのためには、どうしようもない連中への暖かいまなざしが必要なのだろう、と思う。