好きなことをしてきた。
若い頃は、好きなことをしているのだから、
多少給料が安くても、
多少休みがなくても、
多少寝られなくても、
構わないと思っていた。
しかし、それが若い頃に限ったことではなく、
放っておけばいつまでも続く。
結婚もできない。
思い切ってリスクを背負って独立する。
というかするしかなくなる。
何とか生活できても、毎年、というか毎月不安と背中合わせの自転車操業。
この悪しき構造の根源は二つ。
一つは、好きなことをしているのだから苦労して当たり前という風潮。
たしかに、若い頃の苦労は買ってでもしろというし、
厳しさは必要だ。
しかし、個人の過度な努力でようやく支えられている産業は、
いつか衰退する。
今の映像業界がまさにそれだ。
映画やドラマはもっとその兆候にある。
その仕事が好きなのはどの職種でも同じだ。
好きだからその職業を選んで、やりがいを見いだす。
それは、映像業界に限ったことではない。
しかし、かつて多くの人が憧れたこの業界の経営者は、
憧れの職業をさせてあげてやっている、
という傲慢さがどこかにある。
仕事は甘くない。
社員は人並み以上に努力をしなければならない。
しかし、経営者は社員の過度な努力を前提に経営をすべきではない。
こうした悪しき構造の背景には、
仕事の発注経路にある。
映像制作会社のほとんどは営業部門を持たない。
というか、持てない。
なので、代理店から仕事が来るのを指をくわえて待っているしかない。
仕事を自ら生み出す構造を作らなければ、
映像制作会社の未来はない。
もちろん、大手制作会社は百も承知でとっくにやっている。
大手ではない小規模の会社でも、
その構造を生み出さなければ、
起業してもいずれ行き詰まるのは目に見えている。