横山秀夫の短編集。
以前、「真相」という短編集を読んだときにも思いましたが、
この作家の書く短編集は実に秀逸です。
短編といえど、きちんとひねりがあり、
しかも、人物の起承転結がある。
物語の起承転結を何となく作れる人は多いけれども、
人物の起承転結を付けられる作家は、意外と少ない。
そのためには、きちんと主人公の葛藤を描く必要がある。
その葛藤の先に、成長がある作品もあれば、挫折がある作品もある。
関心したのは、表題にもなっている「看守眼」の主人公の置き方。
主人公は誰か? と聞かれれば、留置場の看守なのだが、
彼は、成長する人物ではなく、道を究めた人間として描いている。
彼を描くためには、第三者的視点が必要である。
それが、警察事務で署内の小冊子を作っている若い女性。
彼女が視点で描きつつ、彼女自身の成長も共に描いている。
物語の基本をしっかり忠実に従っているからこそ、
この作品が優れたものになっているのだ。
もちろん、基本に忠実でありながら、
しっかりと、物語はひねっている。
普段、あんまりそういう視点では読まないけど、
あえて言うと、勉強になった。