今年の巨人を支えている二人の野手、
坂本と橋本にはいくつかの共通点がある。
一つは二人とも、東北の高校出身という点。
もう一つは、高校時代はほぼ無名の存在であったという点である。
まさに、発掘したと言っても過言ではない。
この二人をスカウトしたのが、大森剛である。
名前を聞いて分かる方は結構な巨人フリークであろう。
慶応大学で活躍し、ドラフト1位で巨人に入団したエリート。
当時、大阪の上宮高校で上位指名が予想された元木大介を牽制して、
「高校生より下位指名だったら、入団しない」と豪語し、
元木を野球浪人に追い込んだ人物でもある。
鳴り物入りで巨人に入団した大森であったが、ほとんど活躍することができなかった。
一年後、ドラフト1位で入団した元木が、それなりに結果を残したのとは対照的だ。
その大森が、今度はスカウトとして第二の人生を歩むこととなった。
彼が担当したのは東北。
近年差は縮まっているとはいえ、野球が盛んな関西や九州に比べると、人材の宝庫とは言い難い。
そんな中、大森は坂本を見つけた。
「これは本物かもしれない」
自らプロで辛酸を舐めてきた大森だからこそ、
自分に足りないものを坂本が持っていると確信した。
しかし、当時の巨人には無名の選手をドラフト1位指名することなど
考えられなかった。
あっさり却下され、巨人は現中日の堂上(直)を指名した。
幸いなことに巨人は抽選で敗れ、外れ1位に坂本を指名した。
その後の坂本の活躍は言うに及ばずである。
坂本の指名から2年後、大森が発掘したのは、
仙台育英の橋本である。
強肩と打撃センスは注目されていたが、身長は172センチ。
誰もが、プロで通用するとは思わなかった。
ところが、橋本は二軍で着々と力をつけて、
5年目でレギュラーを掴もうとしている。
大森のスカウトとしての目が確かであったことは、
疑う余地はない。
プロ野球の選手の寿命は短い。
30歳半ばまでプレーできれば御の字である。
その後の人生の方が、遙かに長いのである。
プロで華々しい活躍をした選手ばかりでなく、
第二の人生で輝く姿を決して見逃してはならない。