動画スクールPAVIOSの講師をしている、大林です。
現役テレビディレクターとして、最近ではNHKの医療番組なども作っています。
今日は、先日、取り上げたインタビューの中級編として、もう少し、踏み込んだ内容をお伝えしようと思います。
ちなみに、基本編はこちらです。
想定を超える答えを引き出す
インタビューの基本としては、想定する答えを引き出すことです。
例としては、イタリアンレストランのシェフに取材をして隠し味である『味噌』について話を引き出す。
これができれば、取材は成功です。
ただ、大成功ではありません。
取材の大成功とは、想定を超える答えを引き出すことなのです。
私がこれまで引き出せた答えの例をご紹介します。
『医師の働き方改革』について取材したときのことです。
救急医療の現場にいる女性医師は、大変仕事熱心でかつては病院に何日も寝泊まりしてほとんど家に帰らないような生活をしていました。
しかし、昨今の働き方改革により、半強制的に休まなければならない。そのジレンマについて、私は聞きました。医師は、非常に聡明な方なので、そつなく答えてくれたのですが
(この人の想いは、まだ、聞けていないのではないか)
という想いがしていたのです。
ですから、質問をするのをやめました。
世間話風に話したのです。こんな感じで話しました。
「いや~でも、もどかしいですよね。
働きたくても、働けないって…」
すると、医師は言いました。
「そうなんですよ。なんか…遠距離恋愛をしているようです」
このとき、この取材がうまくいくことを私は確信しました。
医師の働き改革でのジレンマを「遠距離恋愛」というワードで表現したのは、私にとっては“発明”でした。
そんな発明的な答えに出会える機会は少ないかも知れませんが、私の経験から言うと、答えてくれると信じなければ絶対に引き出すことはできないということです。
信じても、引き出せないことがほとんどかもしれませんが。
取材対象者との距離感
私が、いつもインタビューするときに気をつけているのが、取材対象者との距離感です。
取材対象者と仲良くなって話を引き出すことが基本のように思われるかも知れませんが、私は、無理に仲良くなる必要はないと思っています。
その理由として、仲良くなりすぎるとどこか馴れ合いのようなものが画面に出てしまう気がするからです。
極端に言えば、インタビューとは1対1の真剣勝負です。
私の使命は取材対象者から、視聴者が楽しめる、役に立つお話しを聞き出すことです。
それが出来なければ、私は制作者としての価値を失います。だから、馴れ合いでは進めたくないのです。
その代わり、私はインタビューのとき、対象者を心から尊敬します。
「自分に出来ないことができる人」「知らないことを知っている人」
という想いで話を聞いています。
そういう想いさえ持っていれば、こちらから無理して近づかなくても、自然に取材対象者は近づいてきてくれると私は思うのです。
取材でインタビューする時間は、平均で1時間くらいです。
そのわずかな時間でも、人と人との間には距離感は生まれ、どんな距離感で話しているか、
画面を通して視聴者に必ず伝わると私は思います。