NHKの玄関で懐かしい人とすれ違った。
シナリオライターのAさんだ。
彼女がまだデビューする前、某プロダクションで一緒に企画出しをした間柄だ。
もう、15年も前になる。
Aさんは優秀ですぐにプロになり、私はその活躍を影ながら応援してきた。
そんなAさんとすれ違ったのだ。
マスクをしていたが、私はすぐに分かった。
しかし、Aさんは分からなかったようだ。
私は、思わず引き返したが、声を掛けるかどうか迷った。
今や、押しも押されぬシナリオライターになったAさんに私のような一介のディレクターが声を掛けてよいのか。
それでも、このチャンスを逃したら一生会うこともないかもしれない、
と思い、勇気を出して声を掛けた。
「Aさんですよね」
声を掛けた瞬間、表情は15年前のAさんに変わっていた。
丁寧で、いつも親切に声を掛けてくれた。
厳しいプロデューサーの要求に応えられず、悩んでいたときにも励ましてくれた。
まさに、戦友だった、あの頃のAさんだった。
彼女は涙を浮かべて「声を掛けてくれてありがとう」と言ってくれた。
少ししか話せなかったが励みになった。
がんばろう…