ここ数年、辻村深月の本を読むようになりました。
彼女の作品には、独特のイタイ男が登場します。
妙に自信があるが、努力もしないし、実力もない。
その上、人を見下し、「あいつらは何も分かってない」などと言い出す。
周囲に甘やかされている分、その現実に気づかない。。
こういうダメ男を主人公の女性はダメだと分かっていて愛するわけです。
この男を内心見下しながら、愛する…この複雑怪奇な女心を見事に描くの辻村作品の真骨頂。
私が、辻村深月のこうした作品に心が揺さぶられるのは、
誰あろう、このダメ男は若い頃の私そのものだな、ということに最近気づきました。
根拠のない自信を振りかざしていたあの頃、
内心、不安でいっぱい。
それを補うために、周囲に攻撃的になる。
典型的なイタイ男。
口では「将来〇〇になる」と大きなことを言っていながら、
そのための努力の糸口すら掴んでいない。
愚かとしか言いようのない、あの頃。
もしかしたら、誰にでも少しは覚えのあるあの若気の至りをきちんと言葉で表現すると、
文学になるんだ、といつも感心して読んでいます。