年明けから、古本屋で見つけた「松本清張集」を読んだ。
昭和45年に発売されたもので、
初期の作品が揃えられている。
「点と線」「ゼロの焦点」「在る小倉日記」「張り込み」を
それぞれ読んだ。
松本清張は後期の作品を何冊が読んだことはあった。
しかし、かなり昔で印象がないくらい。
今回、初めて読む感覚だった。
読んでみると、文章が平易で読みやすいことに驚かされる。
どろどろとした人間模様を描いているのに、
すらすら読めるという不思議な感覚を覚えた。
どの作品も、人間の悲哀が映し出されていた。
一生懸命生きていても報われない、
ただ、その悲哀の中でしか燃え上がることのできない
情念がそれとなく描かれていた。
それとなく…とは、押しつけが少ないということである。
温度は決して熱くないように思えた。
むしろ、かなり作品との距離は遠い。
松本清張は、大衆には絶大な支持を得ているが、
彼の文学的評価は文壇を二分している。
特に、同い年でもある三島由紀夫は死ぬまで松本清張を
認めなかった。
ところが、松本清張は三島由紀夫を
「芥川龍之介も、川端康成も遠く及ばない天才」
と称している。
ここにも、彼の悲哀が浮かび上がってくる。