小学校高学年から、中学校三年生まで、
私は習字を習っていた。
しかも、それだけ習っていても、
一向に字はうまくならなかった。
だいたい、中学生になれば学習塾に通い、
受験対策をし始めるのだが、
私は塾には通わなかった。
「字がへたくそなのに塾にも行かず、
習字を習って…お前、変だな」
同級生にはバカにされた。
たしかに、変だ。
でも、今思うと正しかったように思う。
その当時、私は何かを集中して行うということが不得手だった。
しかし、習字のあの時間だけは、
集中することが出来たのだ。
この時間は貴重である。
と、何となく理解していたのだろう。
塾で競争させられるよりも、
大事な物があそこにあったように思えてならない。