本棚で眠っていた本第二弾。
乙一の処女作。
これを、16歳のときに書いたというのだから驚き。
まさに、天才! 当時の文壇が大騒ぎしたのも無理はない。
目を見張るのは、描写力。
たとえて言うならば、プロのマウンドで小学生が140㎞の球を投げたくらいのすごさがある。
ただ、作品単体をみると、やはり粗がある。
この作品は死体の一人称で語っているのだが、
それが、成功していない。
確かにある種の雰囲気は作っているとは思うけど。
成功していないという理由の一番が、
死体になった時点でいわゆる「神の視点」になっている点だ。
死体=幽霊だから、いいんじゃない?
という解釈もあると思うが、私にはご都合に思えてしまった。
また、一人称の語り手が9歳の子どもにしては、
やたら、大人びている。
もう一つ言うと、死体には感情移入できない。
ありきたりでも、章立てを分けて、
視点を変えて立体的に描かなければ、
描ききれないのではないかと感じた。
つまり、140㎞の球を投げたとして、
プロのバッターを抑えられるというわけではない、ということだろう。
ただ、この作家の能力を否定するものでは決してない。
デビューしてからかなり経っているので、
きっと、最近の作品はよくなっていることだろうと思う。